関常の作文

筆者が自分で考えた物語を掲載します。 読者登録どうぞよろしくお願いします。

ナルシスの渦2

宮田麗華は県営アパートに住んでおり、母親と二人暮らししていた。

不幸にも近隣にはガラの悪い人間がおおく、彼女の同学年にもそのガラの悪い子供たちが多く在籍していた。

麗華はブスではなかったため、付きまといのような恐怖体験も何度も味わった。

高校は進学校であるため、その連中とは別れたが、未だに近くに住んでいるため、慢性的な恐怖に心をむしばまれていた。

母親に迷惑をかけたくないという気持ちの強い彼女は、一切自分の悩みを打ち明けることがなく、それ故に心の支えとなる彼氏を求めるのは至極当然の流れといえよう。

 

森田の後姿は自分を恐怖から解放してくれるようなそんな期待を抱かせてくれるものだった。

「包まれて守られたい」

純粋な欲求はしばし苦悩から逃れさせてくれた。

森田が机に伏せるのを見、麗華も机に伏せた。

(続く)

ナルシスの渦

魚住高校2年、森田壮一は中学時代に犯した自分の行動がもたらす、耐えがたい苦痛に頭を悩ませ、机に両肘をつけ、頭をもたげていた。

本人は自覚していないが、誇大型ナルシストである彼は、強大すぎる自己像を持つ反面、その自己像を妬む幻影の存在を信じ、人前では道化を演じたり、不快な言動を行うことでヘイトを買い、関係を断絶させることで尊大な自分を孤独にし、守ってきたのである。

森田の頭を悩ませているのは、そんな思考が生み出した言動だ。演技であることは自分の中ではわかっているのに、相当な自尊心の欠落につながってしまっている。ナルシストなのに自嘲的であるという矛盾は簡単にはほぐれないであろう。

 

一方そんな森田の顔のつくりがタイプで、彼に好意を寄せている宮田麗華という女子が、森田の推定5メートル右斜め後方の自席から彼を視姦していた。

 

森田はその形の整った顔と前述したようにナルシストな性格により、女子受けがよく、それに起因し、自分に向けられた性的な好意には敏感で、この時も宮田の存在はいち早く察知していた。

「宮田は俺のことが好きなのか」

頭を抱えるほどの思考も、一瞬沸き立った性欲により、急に進路を変更し始めた。

「宮田は中々かわいいよな。だが学力は学年で中盤あたりか、そこが残念だな。付きあわずにセックスできれば最高なのにな。」

森田にとって強大な自分という存在に釣り合う女であると認めた存在には出会ったことがなく、それ故に快楽を生み出す物であるという認識を異性に対して持ってしまっているのである。

 

活発な生徒は他のクラスへ行き、その二人以外に2、3人で固まって弁当を食べ、小さい声で談笑しているグループが数個あるのみで、クラスは静かだった。窓の外は雨の降りそうな明るさの中、蝶々が花壇の中でしきりに羽を動かしていた。

森田はうつろな目で時計に視線を送り、机に伏せ、目を閉じた。

 

             (続く)